悲しみに作用するなら

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悲しみに作用するなら

近くのインターチェンジの改修工事が長引いている。 地域の人は、ETC2.0対応の工事だと言っている。 一般車の俺の車にとってはたいして関係ない。 もうかれこれ3カ月も工事は終わらない。 地域の人々は、「一般」レーンで入り、ETCカードを見せて担当員にPCシステムに手動入力してもらう必要があるため、時間もロスし面倒臭いと愚痴っている。高速を降りる時も然り。 俺は彼女にフラれたり、仕事で凡ミスしたり、スマホの調子が悪く好きな動画が見れないなど、とるにたらない悲しみを振り切るため高速道路をかっ飛ばすことにする。 「あれっ、ETC工事終わったんだな」 鮮やかな塗装が今までの錆びを拭い捨て、煌びやかに輝いている。 「ピッ 悲しみに作用します」 確かに喋った。いつもはピッと音がして終わりなのに… いつものMID NIGHT DRIVINGより爽快に感じた。 そして、次から次へと俺の愛車に夜の帳が染み込みスピードを加速させる。 隣町のICで降りる。そのあとは下道でゆっくり帰るという凡庸な計画をする。 「ピッ 悲しみに作用なら」 なんだか、いつもより明日から頑張れるような気がしてきた。
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