7.鈍感オメガ

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「はい! せ、先輩! 俺、オススメしてもいいですか?」 「なんだ変なやつ。いいぞ、お前の音楽のセンスはなかなか悪くないからな」 「俺、先輩はもっとオケとかそっち聴いてるのかと思ってたから……感動してて」 「聴くけど、別になんでもいい。刺されば」 「俺のスマホに入ってるこれがもう最高に良くて——…」 「わっ! ち、近いなっ!」 「えー、だって、近づかないと音聴こえないじゃないですか?」 「ばかっ、音量をデカくしろ、音量を!」 「ここ、保健室なのに……」 伊万里にとって若王子は、もう怖い先輩ではなくなっていた。 アルファじゃなくても、若王子に逢いたい。純粋な気持ちに火が付いた。でも今はそれを大切に仕舞っておこうと思う。若王子に許嫁がいるのなら、学校生活の範囲で彼と交流するようにしなければ……そんな風に寂しく決意する。 淋しいなと思った。 若王子と逢えなくなるのは嫌だ。ストレートにそう思う。 だからこそいい後輩でいよう。それは伊万里なりのけじめだった。
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