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「はい! せ、先輩! 俺、オススメしてもいいですか?」
「なんだ変なやつ。いいぞ、お前の音楽のセンスはなかなか悪くないからな」
「俺、先輩はもっとオケとかそっち聴いてるのかと思ってたから……感動してて」
「聴くけど、別になんでもいい。刺されば」
「俺のスマホに入ってるこれがもう最高に良くて——…」
「わっ! ち、近いなっ!」
「えー、だって、近づかないと音聴こえないじゃないですか?」
「ばかっ、音量をデカくしろ、音量を!」
「ここ、保健室なのに……」
伊万里にとって若王子は、もう怖い先輩ではなくなっていた。
アルファじゃなくても、若王子に逢いたい。純粋な気持ちに火が付いた。でも今はそれを大切に仕舞っておこうと思う。若王子に許嫁がいるのなら、学校生活の範囲で彼と交流するようにしなければ……そんな風に寂しく決意する。
淋しいなと思った。
若王子と逢えなくなるのは嫌だ。ストレートにそう思う。
だからこそいい後輩でいよう。それは伊万里なりのけじめだった。
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