9.新しい季節

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卒業しても若王子たちはやる気のある人材を集めて、ブラスバンドを結成しているらしい。今は結成したばかりだが定期演奏会も行っていくそうで、楽しそうだ。 若王子との交際は続いた。週に一度、週末には彼の家でデートをする。 約束の日、発情期が来てしまったからと断ったら家まで車で迎えに来られた。卒情してから免許を取ったのだという若王子はますますフットワークが軽くなってしまい、伊万里は困ってしまう。 「普通、発情期だからこそ泊まりに来るんだろ」 「なんですって⁈」 ひと昔前のオメガは発情期の間は部屋に籠もり、時が過ぎるのを待ったのだという。でも、伊万里は今を生きるオメガだ。 「せっかくアルファの恋人がいるのに、お前は古風なオメガだな。発情期だと分かっているならなおさら、何とかできるのは俺だけだろ」 「えっ、でも、それって、なんていうか……」 えっちなおねだりをしているのと同じ意味なんじゃないだろうか。 顔を真っ赤にしていると、若王子に引きずられた。 「行くぞ」 「ちょ、ちょっと、お泊りの用意もしてないし、親に許可取ってないですよ」 「俺が後で連絡してやる。いいから早くしろ、お前が歩けるうちに助手席に乗れ」 「じ、自分で連絡します……!」 あの保健室で、いやらしいことなら何度かした。でも、最後までしてない。そう思うとドキドキして、伊万里は発情期だから動悸がするのか初体験のことを考えて苦しくなっているのかわからなくなってしまった。 若王子は本当に強引な人だ。 自分の思い通りにならないと怒るし、大抵思い通りになるようにしてしまう。それだけの胆力がある。若王子の家に向かう車中の中、彼がぼそりと言った。 「お前が発情期になるの、待ってたんだ」 「そ、そうなんですか?」 バツが悪そうな様子で、若王子が頭を掻く。 「その……、初めてする時、発情期じゃないと痛いらしいからな」 「うひゃあ、そ、そんな生々しい話しないで下さいっ! 緊張しちゃうじゃないですか」 若王子だって緊張していた。そんな彼が怒った口調で言う。 「お前はしたくないのか?」 「し、したいです」 だんだん本格的に身体が火照ってきた。 「ほ、ほんとに薬飲まなくていいんですか? 俺、薬飲まないとどうなるか分からなくて……」
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