スフムシャガ。究極の必殺技!

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 夕暮れ時の中。  遠くにある鉄道橋に電車が走り去るのが見えた。  河川敷を散歩し、草野球やらキャッチボールで遊ぶ人はもう居ない。  川面は茜色に染まり、太陽と重なり合って眩しいほどだ。水面から照り返す光は目を細めるほど強い。  そこに2人の少年が居た。  1人は、思春期を迎えながらも、まだ幼子が持つ快活な様子を持っていた。  物事に拘らない元気さというものは、年齢と共に落ち着きを見せ、やがては大人という雰囲気に至るのだが、この少年の場合はその様子は見られない。  子供のまま、無邪気さと好奇心だけを持っているようだった。  痩せ方ではあるが筋骨がしっかりしており、闊達な性格は面差しも現れていた。  名前を、取手(とりで)行彦(ゆきひこ)と言った。  もう、1人の少年の姿がある。  ゆかしさを持った好ましい少年だ。  メガネをかけていたが、その顔に根暗なイメージは無い。そのレンズの奥にある瞳はとても優しげだった。  生真面目に勉学に勤しみながらも、実直さ堅実さを兼ね備えていた。  名前を、東雲謙吾(しののめけんご)といった。  行彦は地に転がった。  地に這いつくばるというのは敗者を意味するが、行彦は敗北を尚も否定するかのように顔を上げた。  相手を、奴ら男達を睨みつけた。  全員、白や黒の特攻服に身を包み、殆ど意味の分からない難読字の刺繍が施されている。  彼等はいわゆる暴走族と呼ばれる集団であり、今まさに喧嘩の最中であった。  喧嘩といっても一方的な展開である。  相手側の人数は30人。  対してこちらは2人きりだ。  行彦としては数的不利などどうでも良かった。ただ目の前の男達が気に入らないのだ。  その眼光には怒りがあった。
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