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夕食を終えて部屋に戻ると、テレビのリモコンを持ったまま微動だにしない美刀がいた。
日没をすぎても表に出ていることも不審だが、人間ではない思惟でありながら家電を使いこなす姿は変にシュールだ。しかも気を遣う相手がいない部屋の中だから白髪に混ざる赤の絞りも隠さないし気分次第で明滅したりもするので人外丸出しだ、もう慣れたけど。
何を熱心に見てるんだろう、とテレビに視線を移すと、見慣れない図表が表示されていた。
「なに見てるの?」
勢い振り向き、恐ろしい形相で睨みつけてきた。
「セットした予約録画ができていない!」
知らんがな、と言いたいのを腹に飲み込む。
「私は録画なんてしたことないし触らないよ。自分がやったに決まってるだろ」
む、と口元を歪めたが言い返してこない。図星だからだろう。
ふて腐れてリモコンをテーブルに投げ、鋭い眼を細めたかと思うと天井を仰いだ。
『眠い……っ』
「日没すぎてるのに起きてるからだろ。適当に自分で本体に帰りなさい」
『扱いが……雑』
拗ねたような言葉を残して、消えた。
「……え、なにやってんの?」
美刀が選んだテレビは私が触っても壊れないので、予約だけが消えるとは考えにくい。
リストにずらりと並んだドラマやアニメのタイトルに、やっぱり変な思惟だなと思う。
テレビ番組の予約をミスったショックで動けなくなっていたとは。
「私より人間らしいよね」
リストからテレビ画面に戻す操作がわからないので、電源ボタンを押した。
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