少女物語

　と、刹那その五月雨のような騒々しい音の中に、ぴぃんぽぉんという少し音程の外れた音が混ざって聞こえた。

「……はあい」

　来客だ。正直今は出たくなかった。
　しかし、来客があったらすぐに出てしっかりもてなす、という祖母の言葉につられてすぐ返事をしてしまったあたしが悪いのだからしょうがない。
　ああ、重い。重い。腰も足も心も重い。
　あたしはその重い体をゆっくり動かしながら、ずいぶん前から廊下にある黒々しいシミを踏みつぶして玄関へ向かった。
　顔をあげると、玄関に人影が見えた。何だろう。宅急便だろうか。もう死んでしまったこの家に何か用のある人が果たしているのだろうか。
　と、引手に手を掛けたその時、あたしは思わず動きを止めてしまった。
　先ほどまで見ていた影がそこにないのだ。もしかして、いたずらでもされたのか？　それとも他に何かが――
　しかし、まだ鍵が掛かっているはずの扉は、あたしの気持ちも他所にがらぁっと音を立てて勢いよく開いた。

「わあっ」

　思わず目をつむった。その先の光にあたしは飲み込まれた。耳の内がキンキンする。