少女物語

6/20
前へ
/20ページ
次へ
「ち、違う! ただちょっとびっくりしただけで」 「びっくり? 私の方がびっくり。人の家で何をしているのかしら?」  人の家? ……いや、こっちが何を言っているのか聞きたい。  あたしは思わず顔をしかめた。その時、あたしは外の景色を見て思わず 「は」という間抜けた声を半開きの口から漏らした。  一帯が、田んぼになっている。  あたしは扉の前で仁王立ちをしている彼女を押しのけて、無理矢理庭先へ出た。 「ちょっと」  あたしが逃げるとでも思ったのだろうか。彼女はあたしの腕をがしっと掴んで、ぐいっとそちらへ引き寄せる。 「どうして」  いくら周りを見渡しても、視界にあるのは田、田、田。老夫婦が営んでいる床屋もないし、この年になってもまだ飴をくれる向かいのおばさん家もない。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加