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しかし一帯は緑。爽やかで、清々しいほどの黄緑。
後ろを見た。はたして、これは家だ。見間違えるはずがない。でも、なんだろう。違和感がある。
――なんか、新築みたい。
あたしは唖然とした。もしかするとここは――
「ねえ、あなた大丈夫?」
少女の声に突かれ、視線を同じくすると、彼女は少し怪訝な顔をしてあたしの方を見ていた。しかしあたしはその質問には答えず「名前」と一言呟いた。
「え?」
「名前、何?」
少女の眉間のしわが一層深くなった。あたしはその澄み渡った瞳を真っ直ぐに見つめ返す。
「お願い、教えてくれない?」
「……佐倉純子」
ああ、やっぱり。
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