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蓋をゆるめかけていた水筒をいったん膝の上に載せる。
「プロポーズの件、だけど」
突然私が言い出したものだから、あなたはきょとんとした顔になった。
「今、してもらってもいい?」
「え、今?」
「うん」
「でもそれは。えと、どうしよう」
急なことにおたおたとするあなたは、悲しいくらいにいつものあなただった。それが嬉しくて、私は自然と次の言葉を口に出せた。
「その後だったら私のことを殺してもいいわ」
さあっと、強い風が二人の間を吹き抜けていった。しばらく二人とも無言だった。
「……知っていたのか」
「ええ」
硬くこわばったあなたの表情に、私はとっさに視線をおとした。これ以上、私の知らないあなたを見たくなくて。あなたは私の前ではいつも微笑んでいたから。
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