「結婚して猫を飼おう」と約束したあなたは今日私を殺す

13/14
前へ
/14ページ
次へ
 その夜、私は一風変わった夢を見た。  私は若く、美しかった。そしてS国のA山の頂に立っていた。あの桜の大樹は満開だった。そして淡いピンクの花びらが舞う中心であなたがほほ笑んでいた。 『僕と結婚してください』  そう言ったあなたが取り出したものは指輪だった。 『僕は死んでも君を幸せにしたいんだ』 『なにそれ』  唐突かつおかしな台詞に笑ってしまった。 『前は「死ぬまで私を幸せにしたい」って言ってたじゃない』 『生きている間、僕は君を幸せにできなかったから……』  あなたが悲し気に目を伏せた。 『でも君を幸せにしたいと思っていたのは本当だ。君を愛していたのも本当だ。だから君がこちら側にいなかったことを知って、僕がどれほど嬉しかったか』 『……こちら側?』  あなたは私の質問には答えなかった。 『僕をゆるしてくれるなら……いいや、僕をゆるさなくてもいいから。お願いだ。これからは僕をずっと君のそばにいさせて。今度こそ。僕が死ぬまで』  *
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加