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「私、登っている間ずっとあなたのことを考えていた。あなたとの想い出を振り返っていた。そしてわかった。私、やっぱりあなたを嫌いになれない。だから……私にはあなたを殺せない」
「……僕も君のことを愛している」
「嘘ばっかり」
「嘘じゃない! 僕も君のことをいつしか本当に愛するようになっていた。でもこれは任務で、国を裏切れば僕も、僕の家族も殺される。だから……ごめん」
「いいのよ」
「死ぬまで君を幸せにすると誓いたかったのに……」
あなたがこらえきれずに涙を流した。
「もう十分幸せにしてもらったわ。恋をしたり、けんかをしたり……将来を夢見たり。ふふ、結婚したら一緒に猫を飼おうなんて話もしてたわよね。そんなの今までの私の生活では考えられなかったから……だからもうそれで十分」
私は水筒を持ち上げてみせた。
「これね、睡眠薬入りなの。あなたに飲んでもらおうと思って作ったんだけど、今、私が飲んでもいい? そして私が眠りについてから殺してくれる?」
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