1人が本棚に入れています
本棚に追加
この日、お姉ちゃんは上機嫌だった。帰郷して初めて旧友と会う。
しかも、未婚またはシングルマザーと幸せ絶頂という女らじゃなくて気が楽なんだ。化粧をしながら家で待ち構える。多少心配だが、父親が可愛い孫を連れてお出かけ中、女の園に耐えられないと志願して出て行った。
僕は学校が休みでぼけっとしていた。早くから美味しそうな匂いが漂っている。天性のフィーダーである母親がおもてなし役だそうだ。
機嫌がいいお姉ちゃんでいてくれるのは願ったりな状況なのだけど、どこか不安が過ぎってしまう。
作りすぎなんじゃないのかな?
おめかし中のお姉ちゃんがキッチンに入っていき、母親に耳打ちをして鏡の前に戻る。僕はトイレに入り、出る。わずか二、三分のはず。刺激臭に襲われる。
いや、ちょっとまって、僕?確かにたくさん食べてるけど、僕?入って感じるならわかるけど。目が痛い。キッチンのお母さんもマスク着用。
「ふふふ、今日の厳選メンバーは激辛三人衆よ。辛辣なのよ心も舌もね」
目の前に現れたお姉ちゃんは程よいメイクよりは落ちにくいベタ塗りメイク。
「お姉ちゃんがこれ全部入れろって。味付けもないわね〜」
料理好きな母親は味見とつまみ食いでお腹を満たすのだが、ギブアップ。
「きっと足りないからあれ」
洗面台には美容液と一緒にテキサス産とメキシコ産のデスソースが並んでいる。
お姉様、十代の僕ちゃんには刺激的すぎるっす。
最初のコメントを投稿しよう!