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空
沈黙を破ったのは、彼がはっと息を呑んだ音だった。
裏庭を見つめ、蒼白な顔をして立ちすくんでいる。
「どうしたん、優志。真っ青になってる」
彼は微動だにしない。
その視線を私は追った。
不思議だ。
ここは灯りのない裏庭。それなのに、あらゆる葉が鮮やかな緑色に輝いている。
何が裏庭の草木に光をあたえているのだろう。
「ああ」
私は何度も溜め息を漏らした。
この世界のものとは思えない空が、裏庭の高いところにあった。
裏庭を包みこんでいるのは、和みのある黄緑色の艶。
輝いているのは、樹々の緑だけではなかった。
木の幹や私の足もとにも、黄緑色の苔が広がっている。
夜にこのような色があったとは。
黄緑色に覆われた空と地面に私は心奪われた。
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