狩る

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狩る

キョウの部屋は、カフェの雰囲気と同じビンテージな感じにまとめてある。 部屋の中は、キョウと同じ香水の匂いが鼻についた。革製のソファーは座りごこちもよく、癒しの空間だった。 一華とキョウは、ソファーに隣同士に座り、キョウの部屋でたわいもない事を話す。 飲酒もすすみ2人は程よく酒の酔いを楽しんでいた時だった。 突然一華はキョウを真剣な顔をしてみつめる。 「キョウありがとう。いつも助けてくれて……」 キョウは、驚いた表情をしたが、軽く流す。 「ふふふ。いや……始めに助けられたのは俺だから……」 一華とキョウは真剣な顔で数秒見つめあうが、またお互い笑う。 「キョウを助けたのは、当たり前のことしただけよ。私は医者なんだから当たり前だし……」 キョウは、一瞬黙り込み、先程とは違う真面目な口調になった。 「一華、俺あんまり覚えてないんだけど……あの時人工呼吸してくれた?」 「え?そりゃあ……人工呼吸必要だったからしたけど……」 「そっか……」 キョウの質問はこちらは当たり前の行動をしたのに、何だかそこを強調されると、普段は何も思わずおこなう当たり前の行為さえも恥ずかしく感じた。 まだ酔い潰れてはいないが、確かに2人とも結構な量飲んでいる。 キョウは、一華を見つめているが表情からは何を考えているのか読み取れない。 「一華……俺よくあの時の事覚えてないんだけど、何だかキスとは別の……何だか暖かい感じがしたんだ。一生懸命俺を助けてくれようとしたからかな?」 「体が水で冷えてたからかな?わかんないけど……一生懸命だったよ?」 一華は曖昧な返事をした。 酔いもあり理由なんて考えられなかった。 そしてこの会話をしたあとから、なんだか直感的に警告を感じ始めた。 今まで心臓の音なんて気にならなかったが、今は、鼓動が(うるさ)いくらい耳にまとわりついていた。 今までとは違うキョウとの雰囲気に、焦りはあるが酔いが周り始めている為、この雰囲気を脱する方法が全く浮かばない。 今まで左側に座っているキョウの方を身体は向いていたが、とりあえずこの雰囲気を変えようと正面を向き直した。 一華はグラスに入ったお酒をゆっくり飲む。 「俺も人を信じられないから付き合わないんだ……。でも一華とキスしたい……どうして暖かったのか知りたくない?」 いつの間にかキョウは、一華の左頬の3センチ程まで顔を近ずけていた。 一華の頬にはキョウの息がかかった。 一華はキョウに見つめられ動けない。キスしたいなんて、予想外でもうどう対処していいかもわからない。顔を動かせば、唇が当たってしまう。 一華の鼓動は早くなるのに、焦りとお酒で頭の回転は考えれば考える程、動かなくなっていく。 ーー獲物を狩る目だ…… 一華はキョウを盗みみてそれだけ思った…頭の中はもう後先なんて考えられない。 キョウは酔っているだけなのか? 自分も興味があるのか? 完全に一華の思考は停止した。 キョウは一華にもう一度優しくつぶやく。 「一華……キスするよ?」 一華は誘導されたかのようにキョウの方に顔を向けた。そのままキョウは両手で一華の身体を抱きしめキスをする。 お互いの唇と息づかいが暖かく、何も考えられなくなった脳内を快感が満たして行く。 そして、身体には電気が走り、お互いがもっともっとと貪欲に相手を欲する。 重なる口付けも段々深くなり、一華の声が漏れた。 「……んっ……」 それが合図のようにキョウは、一華の身体をそのまま押し倒し、覆い被さる。 キョウは一華の温もりを感じるたびにもっと深く、もっと近くで感じたくなる衝動にかられた。 キョウはもう止められない。 一華の全てを奪いたくなった。 服を脱がせ一華の全てを口にし、一華の肌と自分の肌が重ね合わせる。そこから伝わる暖かさと柔らかさが脳内を麻薬のように蝕む。 何度も一華のもっと深い奥まで入りたくなった。 心も身体も……。 一華もまた、顔も身体もほんのり赤くなり、潤んだ目でキョウをみつめる。一華はキョウにおねだりをしているかのように、無意識に何度もキスをする。 そしてまた快感に引き戻される。 一華はキョウを好きにならないと心に決めていたが、夜を共にし、何度もお互いを求め合い気がついてしまった。自分の本心に……。
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