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好き
すると、梟は消えてキョウがすぐ横に立っていた。
一華はキョウを見て目を丸くし驚く。
この状況を飲み込めない。
キョウは、微笑みながら一華を強く抱きしめた。
一華は頭の中が混乱する。現実かどうかわからなくなりそうだった。
「一華……会いたかった。一華はなんで梟が俺ってわかったの?」
キョウの温もりと規則的な鼓動を感じる。
ーーあの時と同じ……。
久しぶりのキョウの声を聞き涙が溢れた。
「何だかキョウみたいだと思っただけ。わかった訳じゃないの」
キョウは一華の目に溢れている涙を指で拭う。
そして頬をわざと膨らませ、口を尖らせる。
「一華は誰にでも簡単にキスをさせる……」
一華はそんな事した覚えがなく、首を横に振り否定する。
「え?させてないよ?」
キョウは一華を企んだ目でみる。
「俺は短時間の梟姿で2回もキスした」
一華は、相槌をうちキョウの真相を理解した。
「簡単に私はしない……キョウは誰とでも寝たりする……けど」
一華は小さい声で反論した。
キョウは鼻で笑うと、一華の頬を両手で挟み優しくキスをした。
キスはだんだん深くなっていく……
「一華……俺一華が好き。人を信じる事ができなくて誰とも今まで付き合えなかったけど、一華と離れて一華のこと本当に好きだとわかったし、始めて付き合いたいと思った」
一華はそれを聞き、嬉しさでキョウを抱きしめる。
「キョウ……私も好き。私も人を信じられなくて今まで恋が出来なかった……。でもキョウを好きって自覚した途端に神様にまた人間界に戻されてしまった。獣人の世界が夢だったかもしれない……って思い始めてたから、会えてすごく嬉しい」
キョウと一華は、お互い見つめ合い微笑む。
また出会えた事に喜び、本当の意味で想いが通じ合えたことが嬉しく、何度も相手を確かめ合うように身体をゆっくり触りながら、キスをする。
一華はこの時間が幸せすぎて、やはり夢かも知れないと再び頭の中をよぎった。
だが、もう会えないと諦めていたキョウに会えたことが嬉しく、もう夢でも構わないと思った。
「もう離れないから……これからずっと一緒にいるから……」
キョウの言葉に一華は一瞬にして熱を帯びた。
一華が今1番欲しい言葉だった。
「うん。ずっと一緒だよ……」
一華にとってのスローライフは、ゆっくりした仕事や沢山の恋愛ではなく、大好きな医師という仕事と恋愛の両立だった。
キョウが現れた今、心身の安らぎを得られる。
プライベートの充実は一華の生活を色づかせる。
今から本当のスローライフが始まる……。
キョウは一華を大切そうに抱きしめ、お互いの温もりを感じる。
ここに存在している事を確かめ合うように……。
そして、寂しかった時間を埋めるかのように、お互いの身体を求めあった……。
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