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騙される
数日後、一華は今度の日曜日のロウとのデートの為に服を買いに街に出かけた。いろんな店を見回っているとロウによく似た人を見かけた。
「ロウ?」
ロウに似た人の横には若い髪がロングヘアーの可愛いらしい女がいた。手を繋ぎデートを楽しんでいた。
本人かを確かめる為、一華はバレないように2人の後をつけた。時々、ロウに似たカップルは、女の耳元で話しをし、その後耳にキスをしている。
それを見た一華は、まだロウ本人だとは決まってないが、一瞬で顔が曇り、胸の当たりが苦しくなっていく。
ーーロウじゃないかもしれないし……。似た人だよきっと……。
そのままロウに似た2人は高級車に乗ると、車内に入るとすぐに濃厚なキスをし始めた。
それをずっと見ていた一華は、目から涙が流れる。胸が苦しくなるのを堪えながら見ていると、車内のロウと似ている人と目があった。
ロウに似た人は、慌てて目をすぐにそらし、顔を隠した。そしてすぐに車を発車させた。
一華はもう苦しくてたまらなかった。
「ロウ……」
騙されていた事が悔しくて泣きながら帰る。
ーー目が合って確信した。あれはやはりロウ本人だった。
帰宅途中、そのまま家に帰る気もおきず、日は落ちたがcafe近くの海岸に向かった。
海外につき砂浜に座り静かな海をただ見ていた。
ロウの事を考えれば考える程、涙が溢れてくる。
ーー好きだったのかな…こんなに涙がでてくる。
久しぶりの恋は漫画みたいな、降ってきたような出会いから始まった。
ロウに興味を持ち惹かれていった。
一緒に楽しく過ごして、もっともっとロウに好きになってもらいたかった。
一華はなかなか涙が止まらない。すると誰かが隣に座った。横を見るとそれはキョウだった。
日も落ち薄暗いが、泣いているのはわかるはずだ。キョウは泣いている事にはふれず、いつものように声をかけた。
「一華どうしたの?買い物行かなかったの?」
「……買い物言ったらロウが……。彼女とデートしてた。キスまでしてて、二股かけられてた」
一華が静かに涙を流しながら話す顔を見たキョウは、迷いもなく、ゆっくり一華を抱きしめた。
一華は驚いたが、誰かの暖かさを欲していたので、そのまま身をあずけた。
キョウの胸の中は暖かくて、キョウの規則正しい胸の音が一華の心を落ち着ける。
「一華はこんなに近くにいい男がいるのに気がつかないなんて本当に見る目ないよ……」
キョウが海を見ながら呟いた。
一華はそれを聞いて鼻で笑った。
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