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街コン
一華は傷心したはずなのに、次の日から思ったより胸苦しさもなくすっきりしていた。
ーーすっきりしたのはキョウのおかげかな……。
そんな事を考えながら、自嘲した笑みで街を歩いていた一華は一枚のポスターに目がとまる。
『街コン参加しませんか?』
「何これ!こういうのやってみたかった!」
目をキラキラさせ一華は、このまま街コンに参加する事を決めた。
すぐにキョウの顔が浮かんだが、心配させないように街コンの事はぎりぎりに話す事に決めた。
それからは、キョウにばれないように、一華は街コンの日までワクワクした気持ちで過ごしていた。
やっと街コンのことをキョウにも話す日がきた。キョウは声にならない。
一華の気持ちの切り替えの速さにひいていた。
「……楽しんで?」
一華は、キョウが呆れている事も理解できないくらい楽しみで舞い上がっていた。
「もちろん楽しんでくる!」
**
数日後、楽しみにしていた街コンは隣り街で開催された。
沢山の人が参加していた。街全体が盛り上がり、沢山の男女が出会いを求めていた。
ーーみんな獣人だけど、獣人てみんなイケメン、かわいい子ばっかりだな……。私も頑張らないと!
一華も沢山の人に声をかけられた、楽しく酒をのみ笑い、話す。確かに楽しかったし、魅力的な人が沢山いた。
沢山連絡先の交換もしたけど、この場では浅い話しにとどまる為、一華はこの人!と特別に思う人はいなかった。
ーー期待しすぎたかな?
そう感じていた時だった。
近くの女の人が倒れた。顔を真っ赤にしている。
ーー飲み過ぎ?急性アルコール中毒?
一華はすぐにその倒れた女の近くに向かうように身体を向け立った。だが、一華よりも先にサッと彼女の側に行き声をかける男がいた。
その男は、倒れた女に意識があることを確認すると身体を起こし水を飲ませる。脈を測りそのまま救護室へ運ぶ。
一華はその場にたちすくみ、そのままその男の一連の流れを見惚れていた。
ーー動きがスムーズ。カッコいいんですけど……。医療者?
その男の手が塞がっているのをみた一華はドアを開け、医務室に行きやすいように近くの街コンのスタッフに状況を説明した。
男は一華をみて、そのまま医務室に運んだ。
ーー意識あったし大丈夫でしょう。それにしてもあの人かっこよかった。
一華は、20時も過ぎた為、街コンから帰ろとした時だった。さっきの酔った女の人を運んだ男の人が、声をかけてきた。
「僕は狐と言います。さっきはありがとう。よかったら君と少し話しがしたいんだけど……だめかな?」
一華は思いもかけない誘いに顔を赤くし興奮する。
「喜んで!」
お互い微笑みそのまま2人で街に姿を消した。
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