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憂鬱
数日たった一華は最近仕事中も憂鬱な顔をしていた。
「一華……とうかした?最近ため息ばかりついてるよ?恋愛上手く言ってないの?」
一華はキョウの顔を見るが、いつもとは違い歯切れが悪くなかなか返事がない。
「一華?どうしたの?」
キョウは一華が心配で作業をやめて見つめる。
一華は、重い口をあけた。
「ビャクとあれから全くあってない……」
「医者って言ってたから忙しいんじゃないの?」
一華は首を横にふり顔を歪めた。
「始めはそう思ったんだけど……」
なかなか続きを言わない一華にキョウは言うように急かす。
「何?一華らしくないよ。何?」
一華はいつものようには内容的に言いだしにくく、思うように言えずにいたが、勇気をもって口にした。
「うん……。今付き合ってる人と別れるのにお金がいるからって言うから……。早く別れてほしくてお金を何回かビャクに振り込んだけど……」
キョウは目を丸くし一華をみる。
「え!一華!駄目だよ。それは詐欺じゃないの?……だいたい彼女いたのに婚活行ったことになるよ?」
一華は薄々気がついていたものの、キョウに指摘され、今にも泣きそうな顔をしている。
キョウはその顔を見ると無意識に一華の腕を引っ張り抱きしめた。
「一華……ビャクはやめときな。一華はいい子だから幸せになれる恋をしてほしい。」
キョウの腕の中で啜り泣く一華のくぐもった声が聞こえた。
「やっぱり恋向いてないのかな〜。スローライフのできる世界にきたつもりだったけど、元いた世界よりもここの方が凄く辛い……仕事の方が楽……」
キョウは一華の言葉を聞いて、一華を抱きしめる手を強めた。
「一華は無理して恋するよりも、医者の仕事をしている方が、キラキラしていると思うよ?この世界に来ても、患者さんいるといつも、うずうずしてるんじゃない?」
一華は、キョウの言葉に優しさを感じ、キョウの身体を抱きしめ返す。
一華の手にチカラが入ったのを感じると、続けて一華に語りかけた。
「スローライフは確かにいいかもしれない。でも無理矢理全てをスローライフにしなくても、仕事の合間の時間の使い方とか、自分にとっての心のゆとりを見つける事が大切なんじゃないの?俺もスローライフよくわかんないけど、一華をみてそう思った。苦しそうだよ……」
一華はキョウの言葉を聞いて、また涙が溢れてきた。
「……キョウ……。ありがとう。頭が冷えた。私恋愛は時間がないからだと思ってた。本当は違うんだ。人を信じて裏切られるのが怖いからなかなか恋愛できないの。ここに来て、少し心がオープンになったと思っていたんだけどね。空回りしちゃった……。確かに医師の仕事が恋しい時もある」
一華は涙が頬を伝う。顔をあげキョウを見つめて微笑んだ。
キョウも一華を見て微笑みかえす。
「明日は休みだ!今からお疲れ会だ!」
一華もキョウも腕を上に向かって突き上げながら掛け声をあげる。
「「おーー!」」
店の奥には、続きになっているキョウの部屋があり、そこで2人はお疲れ会をする事になった。
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