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 律は家に帰ると、昨日の後輩たちの写真を見ながら首を傾げる。確かに同じ中学に通っていたはずなのに、どの人物にもピンと来なかったのだ。  まぁあれから十年以上経ってるわけだし、わからなくて当然か。  その中で夢と同じストレートヘアの女性を追っていくと、ある一人の人物の元で視線が止まってしまう。  長めのストレートヘアに、黒い小花柄のワンピース、綺麗めな顔立ちの彼女は、同じ中学から女子で唯一律と同じ高校に進んだ相沢(あいざわ)(みどり)だった。  才色兼備とはよく言ったもので、まさに彼女のことだった。進学校と言われていた高校で律はクイズ研究会での活動に全力を注ぎ、翠は成績の上位者に名前を連ねていた。  同じ中学出身だからか、顔を合わせれば他愛もない会話をすることもあった。その時は律の話に耳を傾け、軽い相槌を打っていた。とはいえ、クールな彼女がそんな態度をするのは同じ中学出身の律に対してのみだったので、気を許している証拠だろうと勝手に解釈して流していた。  そう言われてみれば、あの話し方って相沢っぽい気もするけど……いや、彼女が俺の頭をあんなに優しく撫でるなんて有り得ない。  首を横に振りながら写真をスクロールするものの、何故か気になって翠が映る場所へと戻してしまう。  相沢、綺麗になったなぁ。きっと彼氏もいるだろうな……。もし夢の人物が相沢だったとしても、俺なんて相手にされないよ、きっと。それならキスしたことはちゃんと謝らないとな。  否定的な考えが頭を占め、むしろその考えで頭を埋め尽くそうとした。そうすればこのくだらない考えを消せると思ったのだ。  だけど直感というやつはなかなか消えてくれない。考えれば考えるほど、確信に繋がっていく。  そうだよ。勘違いだっていいじゃないか。とりあえず確認しにいって、間違っていたら盛大に笑われればいい。  律はベッドから起き上がると、自転車の鍵を掴んで家を飛び出した。
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