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 彼女は、部屋の端を仕切っているカーテンに手をかけて、そのまま左側へ引き開けた。そこには、色鮮やかなドレスたちがずらりと並んでいた。 「へえ……」  思わず声が出る。流石お姫様の衣装だ。思わず目移りしてしまう。艶のある上品なシルクや、豪華な宝石をあしらったドレス。どれもとんでもなくお高い物に違いない。  彼女はカーテンを開け切ると、わたしの背後にまわって背中のホックに手をかけた。どうやら着替えの手伝いをしてくれるらしい。 「いいよ、自分でやるよ?」  ちょっと恥ずかしいのもあって、わたしが反射的にそう言うと、彼女の手がビクンと震えた。 「も、申し訳ありません!」  急に大声を出されたのでこちらがびっくりする。彼女は絨毯の上にひれ伏して震えていた。一瞬とまどったが、彼女を起こすため、その顔を覗き込んだ。 「どうしたの? そういうの困るんで、顔を上げて」 「お、お許しください!」  声をかけても、彼女は怯えるばかり。わたしは仕方なく、適当にドレスを選んで自力で着替えを済ませた。 「ねえ、もう着替え終わったから、わたし、行くけど」  彼女はずっと床に縮こまったままだ。そのまま部屋を出るのは気がひけたが、わたしがいる限り、ずっとこのままだろう。仕方ないので、わたしはそっと部屋から出た。
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