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「少し早いけど、朝食にしましょうか」  わたしは彼女の斜め後ろについていく形で中庭を出た。まるで迷路のような建物の中を二、三分ほど歩いたところで、両開きの大きな扉の前にたどり着いた。  わたしたちが立ち止まるよりも早く、護衛たちが扉を開ける。そこは、わたしがいた部屋と同じぐらいの広さの食堂だった。中央にはドラマなんかでよく見る、細長いテーブルが置いてある。その上には、沢山のご馳走が並んでいた。  〝お母様〟は、テーブルの奥側の端に座った。ドラマみたいに、テーブルの端っこ同士で食べるんだろうと思い、反対側の端を確認する。しかしそこには椅子がなく、かわりに彼女の斜め向かいの席にナプキンなどが置かれているのを見つけた。  目の前に並んでいるのは、いったいどうやって食べたらいいのか分からないものばかり。わたしは彼女が食べ始めるのを待って、見よう見まねで料理に口を付けた。  夢にしては美味しい。とういか、今まで経験したことのない上品な味で、これならいくらでも食べられる。いやいや、ダイエット中だし、とか場にふさわしくないことを考えていると、彼女がスプーンを置いて溜息ともつかない声を漏らした。 「もって、あと一週間らしいわ」 「えっ?」  虚を突かれたのと、食事に夢中だったのもあって、声が少し裏返ってしまった。
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