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「ただいま」  マンションに帰ると、玄関のセンサー式ライトが点いてわたしを迎えた。ダイニングに入ると、テーブルの上に書き置きがある。 『豆腐たっぷりのヘルシー&ジューシーハンバーグを召し上がれ! ちゃんとチンすること!』 「ヘルシーでジューシーって……」  書き置きにツッコミを入れながら冷蔵庫を開ける。ラップに包まれたハンバーグとスープを取り出し、レンジの中に入れた。  レンジの動作する音がダイニングを支配する。わたしはもやもやする気持ちがあふれ出しそうになり、テレビを付けた。  テーブルに倒れこむように左のほっぺたをくっつけると、ちょっとひんやりして気持ちいい。テレビの画面の中では、お笑い芸人たちがどうやって面白いことを言おうかと、隙をうかがっている。彼らはそれが仕事なんだ。  しばらくしてレンジがわたしを呼んだが、動こうという気が起きない。もしかしたら、これは無気力症とかいうやつだろうか。  なんとか気合を入れ直して体を起こすと、冷蔵庫から作り置きの麦茶を取り出し、ハンバーグたちと一緒にテーブルに並べた。
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