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『行き当たりばったりで決めちゃえば?』  わたしは自室のベッドの上に転がって、電話で友人のなずなと話していた。 「簡単に言うね」 『紗月って真面目すぎなんだよ。どうせ答えなんか出ないんだから、とりあえず先に進んでから軌道修正っていうのが普通じゃない?』 「まあ、そうかも知れないけど」 『うんうん、納得してないね』  なずなは思ったことは即行動するタイプの人間だ。彼女が悩んでいるところを見たことがない。というか、止まっているところすら見たことがない。 『慎重なのも悪くないとは思うけど、悩みすぎて、シワ増えても知らないよ』 「ねぇ、なずなはどうやって進路決めたの?」 『第一印象、かな。大事なのはフィーリングよ』 「……相談する相手を間違えました」  今まで、彼女の選択が間違っていたことはほとんどなかった。選択することに関して言えば、彼女は天才の部類なのかもしれない。わたしもそんな風になりたい。こんなことでいちいち悩んでいたら、気が付いたら時間切れなんてことになるのではないか、そんな焦りすら覚えるのだ。  答えがあるのかも分からない問題を解くのはつらすぎる。研究と違って、出した答えが自分にそのまま降りかかってくるからだ。わたしはスマホをソファに放り投げると、次第にまどろんでいった。
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