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 目を覚ますと、そこは見知らぬベッドの上だった。  薄いピンク色のレースに囲まれた天井、豪華な装飾と宝石のちりばめられた柱。  起き上がると、なんだか、体がフワフワした。最初はベッドの柔らかさのせいかと思ったが、絨毯の上に立っても妙に安定感がないのだ。  今いる部屋は、どんなスイートルームよりも豪華であることは間違いなかった。とにかく広く、わたしの部屋なら二十個は入りそうだ。  おとぎ話でしか見たことのないような家具たちが部屋を彩り、アロマキャンドルの甘い香りが鼻をくすぐる。  目覚め切っていない頭を覚まそうと、壁にかけられた大きな鏡に自分の姿を映したとき、わたしの頭もようやく回転を始めた。そこに映っていたのはまぎれもない、お姫様だったからだ。 「お目覚めになられましたか、姫君」  不意に声がして振り向くと、そこには整ったスーツを着た男がかしこまって立っていた。七三分けで縁なしのメガネをかけた、執事のお手本のような姿だ。
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