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「まさか、なずなだったなんて思わなかったよ」
「わたしはお姫様の正体、知ってたけどね」
「え、なんで?」
「うちの付き人は協力的だから」
なずなが言う付き人とは、あの赤い服の女の人だろう。どうやったかは知らないが、影の巨人を呼び出したのも彼女のはず。わたしに直接接触してきたし、誰かさんと違って行動的なようだ。
「お姫様生活はどうだった?」
「どうもこうも……色々と大変だったよ」
そう言ってみたものの、異世界の生活に馴染み始めていたわたしには、目の前のなずなの方が異質に見えた。わたしは自分が異世界の人間なのだということを忘れかけていたのでは。
「そっちこそ、食料が尽きかけてたって聞いたけど、大丈夫だったの?」
「ん? 平気だよ。あれはこちらを油断させるための嘘だから」
なずなはあっけらかんとして答えた。
「うちの付き人は優秀なんだよ。望むものを何でも出してくれるの。ちょっと贅沢し過ぎて太っちゃったかも」
そう言って、なずなはお腹をさすって見せる。まあ、無事だったのならよかったが、心配して損した気分だ。
「とりあえず、ほっとしたよ。後はわたしたちが形式的に結婚すればハッピーエンドなんでしょ?」
戦争状態だった両国の王子と王女が結ばれ、永遠の友好の象徴となる。これでこの物語は終わりというわけだ。
「……それじゃ、綺麗にまとまり過ぎて、つまんないと思わない?」
わたしがほっとしていると、なずながニヤついた顔をしてこちらを見つめた。
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