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 なずなは周りを気にする素振りを見せた後、わたしの耳元に顔を近づけた。 「駆け落ち、してみない?」  わたしは耳を疑った。なずなはいたずらっ子の顔で、わたしの反応を待っている。 「結婚が決まってるのに、なんでわざわざそんなことするの」 「面白そうだから」  思いついたら即実行する。なずなは昔からこういうタイプだ。 「駄目でしょ。せっかく二つの国が仲良くしようって言ってるのに、変なことしたらまた拗れちゃうじゃない」 「それは大丈夫でしょ。国民には永遠の友好を約束したし、巨人の件もあるしね」  なずなは、夜の闇にうっすらと浮かぶ、巨人のシルエットを目で追う。 「ちょっと、大人たちにお灸をすえてあげましょうよ」 「ええ、ホントにやるの?」 「もちろんよ」  なずなは腰に手を当ててうなずいた。この子がやると言うからには、絶対やるのだ。こうなったら、もうどうにでもなれだ。わたしも〝お父様〟には思うところもあったし、いい機会かも知れない。
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