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夜もふけ、会食がお開きになると、両家の王族達は自室に戻っていった。広いホールにわたしとなずなの二人が取り残された形となる。大人たちに気を遣われたのだろう。
「これはこれはお揃いで」
ベランダの方から声がして振り返る。そこには水先とこちらの国の案内人が並んで立っていた。
「ちっ、駆け落ちの邪魔はさせないよ。ずらかろう、紗月」
「いやいや、賊じゃあるまいし」
なずながわたしの手を引っ張るが、この状況で逃げられるわけがない。
「まあまあ、落ち着いて下さい。我らはあくまでお二人の考えを尊重し、サポートする者。邪魔するつもりは毛頭ありません」
水先がなずなをなだめるように制してきた。
「ホントに? そんなこと言って、この国に縛り付けるのが目的だったりしないでしょうね」
「まさか。何度も申し上げているように、この物語はお二人が紡ぎ上げていくものです。我らはその選択の結果を見守るのみ」
水先はいつものように飄々とした態度でそう言うが、どこか違和感があった。目が笑っていないのだ。
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