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「物語とは美しくなくてはいけません。それを穢そうというのならば、お仕置きをしなければなりませんね」
水先が翼を広げ、宙に舞い上がる。この男がわたしたちを縛ろうというのなら、わたしは徹底的に抵抗する。そう決意したとき、わたしの背にも翼が生えた。
「えっ、なになに、どういうこと?」
なずなが驚いているが、わたしはなぜか、出来て当たり前だと思っていた。
水先は悪魔と変わってしまった。このままでは、この世界に災いをもたらすかも知れない。悪魔に対抗出来る力となれば、天使の力しかないだろう。
巨人が現れたり、人が悪魔に変わったり。そもそもこの世界にわたしがいる事自体が、幻想の産物なのだ。この世界はわたしが紡ぎ出す物語。そして、わたしはその物語の主役だ。わたしはこの世界をコントロール出来るはずだ。
宙を舞い、水先と対峙する。その禍々しい姿は、まさに悪魔だ。
「面白いじゃないですか。では先程の舞踏会の続きと行きましょうか」
水先が、背に生えた翼を大きく横に薙いだ。翼からこぼれた羽が、わたしに向かって飛んでくる。わたしは咄嗟に水先の真似をして翼を振った。白と黒の羽が空中で衝突し、光となって消えていく。
「いいですね、もっと踊りましょう」
水先は不敵な笑みを浮かべると、翼を大きく広げた。
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