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「この国の王家の家族写真です」
その写真には三人の人物が写っていた。中央にわたし。そしてその後ろに両親と思われる男女が一人ずつ。後ろの二人は、少なくともわたしの両親とは似ても似つかない。
「この国は今、隣国と戦争中なのです。仕掛けたのはこちらの国なのですがね。……あれをご覧ください」
彼はさっき鳩が逃げていった窓を指差した。窓の外に広がる城下町のさらに向こうに、燃えるように赤い陵線が見えた。
「あの山の向こうにもうひとつ、王国があります。戦争の相手であり、愛すべき相手でもある。あなたにとっては何よりも」
そう言って、今度はわたしの胸元を指差した。今まで気が付かなかったが、わたしは銀色のロケットを首から下げていた。
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