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事の起こりは十八世紀の頃だ。
場所は、北欧の片田舎にあった。
「エリー、どうしよう!嘘みたいなことが起きたのっ!!!」
そう言って、私の肩を掴んできたのは姉のメイサ。
慎ましやかな胸元を上下させていた。
「どう、どう、落ち着いて。ジーク・フリートと何か進展でもあったの?」
からかうような口調を心がけて、私はメイサに訊ねた。
本当はそうであって欲しくないと、心の端っこでは思っていた。
「そ、そうなの。あ、あのね……きゅ、求婚されたのよ」
嬉しくて堪らないと、胸元に手を添えている姉は、私の心が軋んだことを知らない。
私さえも知らないふりをして、オーバーに仰け反ってみせた。
「わぉっ!素敵ね。ついにジークが私の兄になるのね」
そう、兄で十分。
彼が兄で、私は義妹。
それで、十分幸せよ。
きっとこんな痛みは直ぐに忘れてしまえる。
だって、メイサもジークも私は決して失わないのだから。
「おめでとう、メイサ。幸せに……どうか、幸せであってね」
私の分も……。
まるで神に捧げるように、本気でそう願っていたの。
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