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「やぁ、エリー。すまないね、君の愛する姉上を奪ってしまって」
結婚式の宴席の最中で、ジークが私に声を掛けて来た。
「本気で悪く思うなら、私に誰か、いい男を紹介しなさいよね」
私は片眼を閉じて、高慢に笑って見せた。
「君はいつだって引く手数多じゃないか。僕が話しかける隙が無いほどだったよ」
「あら、聞こえなかったの?私は『いい男』って、言ったのだけれどね」
自慢じゃないが、私の見た目は派手で、まぁ、性格も派手。
そこら辺の男の『恋』の相手には、きっと、打って付け。
清純淑女のお手本のようなメイサとは月とスッポンだと自覚している。
同じ胎から産まれ、同じ環境で育ったのに、何故にこうも違うのか?
それは私自身が一番聞きたいことだ。
きっと――。
「これまでずっとメイサに護られてきたのよね、私って」
だからこそ自由奔放で在れた。
いつだって、味方になってくれるメイサがいるから堂々と胸を張っていられたのだ。
「今度は私がって、言いたいところだけど、その役はあなたに譲って差し上げるわね、お義兄様?」
大事にしてね。と、微笑む私に、ジークは膝を折った。
「神には既に誓ったが、エリー、君にもう一度誓うよ。僕は君の最愛の姉、メイサを命に懸けて守ると誓う」
幼い頃から密かに想い続けていた初恋の人は、私の心にしっかりとけじめを付けてくれた。
「ありがとう、ジーク。あなたに祝福を」
私は自身の指先に口付けし、その指をジークの額に印した。
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