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「0番の荷物を取り上げなくて良いのですか?」
「どうせ、明日一緒に焼いてしまうんだ。何よりドブ臭いんだよ!あんなもの手袋しても触れるか!?」
パトカーに乗せられて、白が連れて来られた場所は鉄格子の中だった。
そう、この場所は刑務所。
刑務所とはいっても、ここは他の刑務所とは違う。
刑務官が囚人を番号で呼ぶ場所。
0番。
昔、地上にいた頃に白は聞いたことがある。
裁判にも掛けられず、即刑が執行された犯罪者が居た。その犯罪者の罪名もその何も知るモノはいない。
ただ、その犯罪者は刑が執行される時こう呼ばれたのを聞いたモノがいる。
〝0番〟
白の脳内に生きた中で聞いた様々な声が勝手に流れた。
はじまりは今は亡き母の声だった。
『あなたが生まれた時、先生の顔が怖ばってね…ママはあなたが黒子だと思ったの。
だから、先生からあなたを取り上げて逃げたのよ。
家までなんとか逃げ帰って、真っ赤に染まったあなたを洗ったの。そしたら、真っ黒なんかじゃなかった…
その逆に、真っ白で。
びっくりしたけれど、それから私は国にあなたを育てることが許されて…本当によかった。
もし、あなたが黒子だったら…育てられていた自身が無い…ごめんなさいね。』
母は病院のゴミ捨て場を通る度に、毎回同じ話をしたものだった。
次に流れたのは、ゴミ捨て場で聞いた彩の大きな泣き声。
そして、次々と拾った日の子どもたちのか細い泣き声が頭の中を騒がしくする。
『どうして…どうして色が変わらないの?
よりによって何故、この色なの?』
これは白自身の声。
この時白は呪いだと思った。
母に自分が生まれた日の話を聞かされながら、捨てられた真っ黒な赤子を横目で見て、当然のことと。何の疑問も感じなかった自分への呪い。
試したことの無い色が一つだけになった。単なる興味?ノリ?漆黒の誘惑。軽はずみな自分に与えられた重い罰。
あの時、自分を真っ黒に変えた水彩絵具は今も大切に閉まってある。リュックの内ポケットに。
捨てられなかった黒い呪いは、いつしか人生を彩る魔法に変わった。
白はリュックの内ポケットのチャックを開け、久しぶりにソレを手に取った。
(あれ…これは…)
白はポケットに手をあてた。
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