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「斎藤……碧衣です」
「巽です。こう見えても弁護士です。碧斗くんと一字違いなんだね」
「碧斗くんのことを知っているんですか?」
「知っているもなにも3月末とはいえ夜はかなり冷え込む。真夜中に下着姿で裸足で歩く彼を保護し、警察に連れていったのはこの私だ。その後の調べで母親からは育児放棄され、母親の内縁の夫からは激しい暴力を受けていたことが分かり、碧斗くんは児童養護施設に入所した。でもまさかほとづく教の教祖の孫だったとは。驚いた。詳しいことはあとで説明する」
自宅へは五分ほどで到着した。
警察が駆け付けて騒然としていた。
「碧衣さん待て」
車から下りようとしたら巽さんに止められた。
「発砲音を聞いたと近所から通報があったほか、隣の家の女子高生が友だちを助けてくれと110番通報したみたいです」
ハンドルを握る男性がスマホを耳に当ててバックミラー越しに後ろを見た。
「良かった。智ちゃん無事だったんだ」
こんこんと遠慮がちに窓ガラスをたたく音が聞こえてきて。思わず身構えた。
「大丈夫。知り合いの警察官だ。味方だから安心しろ」
巽さんが不安を一掃するように優しく微笑んでくれた。
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