碧衣と碧斗

3/14
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「お姉ちゃんね、その年の九月に杉の子幼保園で二週間保育実習をしたの。そのとき碧斗くんの弟くんと妹ちゃんに会ったの。年長と、年中。年子だった。碧斗くんのお母さんは赤ちゃんをおんぶして、小さいな女の子の手を引いて送り迎えをしていた。もしかして知り合いって先生に聞かれたから、一番上のお兄ちゃんが、妹と同い年で三月まで同じクラスだったって正直に答えたら、あら、変ね。お兄ちゃんはいないはずよ。小学二年生のお姉ちゃんが一番上なはずよ。そう答えが返ってきて、これは、もしかしたら開けてはいけないパンドラの箱なんじゃないか。そう思って、それからは碧斗くんのことは誰にも言わなかった。お母さんが聞いた話しでは、碧斗くんは最初の夫の子で、飛鳥ちゃんは二番目の夫の子。下の五人のお父さんは殺された井上さんなんだって。結婚して、すぐに離婚したけど、離婚後も一緒に暮らしていた。偽装離婚なんじゃないかって、みんな噂していたみたいだよ。離婚しているのに六人も子どもがいればそうなるよね。たびたび虐待の疑いがあるって通報もされていた。生活保護の不正受給がバレて、返還するよに求められていたみたいよ」 メールの着信音が鳴った。 「智ちゃんから?」 「ぜんぜん知らないアドレス」 気味が悪いから消そうとしたら、ぶるぶるとスマホが振動したからビックリした。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!