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「電話を切るな!切ったら殺される。姉貴も死にたくなかったらそこから動くな!」
1時間前に交際中の彼女と初詣に出掛けたはずの4歳年上の陽仁お兄ちゃんががたがたと震えながらリビングに入ってきた。
お兄ちゃんの背後には若い男性。その顔に見覚えがあった。
「もしかして……碧斗……くん?」
自信がなかったけど、昔のまんまだったからすぐに碧斗くんだと分かった。
「誰もボクのことを覚えてないんだ。酷くない?智子も千恵も知之も永人も、4年1組の連中はみんなクズだ」
「智ちゃんに何したの?」
恐怖で声が震える。
「ボクは碧衣を突き飛ばしてなんかいない。それなのに突き飛ばして怪我をさせた、碧斗は嘘つきだって先生やあの男にチクッた犯人が4年1組にいるって聞いたんだ。絶対にソイツを見付けてズタズタに切り裂いてやらないと腹の虫が収まらない」
手には真っ赤に染まるサバイバルナイフが握られていた。
「碧衣、コイツを殺されたくなかったらさっさと思い出せ!」
首にナイフを突き付けられ、ひぃー!お兄ちゃんが悲鳴をあげた。
「そこだけ記憶がないから、思い出せって急に言われても困る」
「なんでもいいんだ。早くしろ!」
碧斗くんが声を荒げた。
「ちょっといい」
お姉ちゃんがびくびくしながら右手をあげた。
「なんだ」
「碧衣は机の角に頭を強く打って2日分の記憶がないの。本当よ。嘘じゃないわ。催眠療法を受けて治療を受けた時の音声がボイスレコーダーに残ってるわ」
「どこにあるんだ」
「茶の間よ」
「どうせ警察に通報するための嘘だろう?」
「違う」
お姉ちゃんが語気を強めた。
「スマホをここに置いとくわ。お願いだから二人を傷付けないで」
スマホを床の上に置くと両手をあげてゆっくりと後ろ向きで歩くと隣の茶の間に向かった。
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