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「斎藤飛香は腹部を刺されていてN総合病院に緊急搬送された。実は俺の彼女、N総合病院で医療事務をしているんだ。警察が24時間張り付いているから、捕まりにいくようなものだ」
「そんな危険を犯してまで碧斗くんは飛香ちゃんと決着をつけようとしている。八年前に何があったんだろう」
「これはあくまで推測だけど、私はお兄ちゃんみたくはならない。継父とママと下の子たちに愛される子になるんだ。そのために継父とママの言うことをちゃんと聞いて、下の子たちの面倒もちゃんとみて、うんと可愛がってもらうんだ。飛香ちゃん表向きは優等生でいい子を演じていたのかもしれない」
「実際はその逆か……やっぱりな」
「お兄ちゃん、何か知っているの?」
「いや、それは……」
急に歯切れが悪くなり言葉を濁すお兄ちゃん。
「もしかして飛香ちゃんも、継父から性的な虐待を受けて妊娠をしたとか。そんなのあり得ないか。ドラマの見すぎだよね?お兄ちゃんどうしたの?」
お兄ちゃんの顔は笑ってはいなかった。固く、強張っていた。
「もしかしてそうなの?」
「病院に搬送されたとき、お腹が大きいことに医者が気付き、その後、妊娠していることが分かった。父親が誰かはまだ分からない」
「だったら尚更碧斗くんを止めなきゃ」
防寒着を着込み、お兄ちゃんたちとN総合病院に向かおうとしたら、
「ただいま」
「いや、寒かった」
初詣に出掛けていた両親が帰ってきた。
「神社でね碧衣の同級生にばったり会ったのよ。挨拶だけしたいって言うから連れてきたわよ」
「よ、碧衣」
両親と一緒にいたのは久し振りに会う同級生だった。
「あれ?なんで?」
驚いて目をぱちぱちした。
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