碧衣と碧斗

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「どうしたんだ碧衣?幽霊を見るような目で見て。ほれ、見てみ。足はちゃんとついてるぞ。もしかして久し振りすぎて同級生の顔を忘れたとか」 にやりと悪戯っぽく笑ったのは中学校まで一緒だった永人(えいと)くんだった。 「だってさっき碧斗くんが………」 「碧斗?俺、会ってないよ」 「嘘だ」 「嘘じゃないって」 永人くんは笑いながら返事をした。 昔からそうだ。永人くんが嘘を付くときはいつも決まって能天気に笑っている。 会ったのになんで会っていないって、すぐにバレるような嘘をつくんだろう。碧斗くんに刃物を突きつられてもやけに冷静だったお兄ちゃん。考えれば考えるほど矛盾点はいくつもあった。 「お兄ちゃん、永人くん……」 「碧衣」 お姉ちゃんに腕をぐいっと引っ張られた。 逃げろ。そう目が訴えていた。 「智ちゃんと初詣に行くんでしょう?夜も遅いし、そろそろ寝たら?」 「うん、分かった」 お姉ちゃんと両親が心配だった。でも碧斗くんを止めなきゃならない。自分の部屋に向かったと見せかけてお風呂場に逃げ込んだ。 浴槽の上にのぼり、小窓から這うようにして外に出た。灯油のタンクの上から下を覗くとぞっとした怖さがあったけど、意を決して飛び降りた。
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