草原の音

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 涼は走り続けた。青も、それを追い続けた。  階段を降り、廊下を走る。すれ違った生徒たちが何事かと振り向いた。  中庭に出たところで、涼は座り込んだ。肩を上下させてゼーハー言っている。  青も近くに座りんで息を整えた。涼は足が速いくせに持久力はないらしい。 「……あの」  青が話しかけようとすると、涼は小動物が威嚇するかのような顔で振り向いた。 「確かにっ……勝手に調べたのは悪いと思うけど……はあ……あの紙が飛んできたのは俺のせいじゃないから!」  青は困惑してしまった。どうして自分の曲を知っているのか問いただそうと思ったのに、なぜか相手が牙をむいてくる。 「あの、とりあえず呼吸整えたら?」 「……」  涼は、何度か深呼吸を繰り返した。なんだか意外だと思った。涼のこんな姿を今まで見たことがなかった。  涼の様子をぼんやりと見ているうちに、青は大事なことに気がついた。はっとして涼に近づく。彼は少し体を引いた。 「もしかして、高評価押してくれてたのって霧橋?」 「高評価?」  涼は、ぽかんとした顔をしたあと、ああ、と納得いったように頷いた。 「うん。いい曲だと思ったから高評価ボタン押したと思う」  衝撃。そのあとにじわじわと感謝と興奮が押し寄せてきた。 「ありがとう!」  思わず涼の両手を握ってしまう。涼は明らかに戸惑っているようだった。 「……怒ってないの?」 「怒る?」  そういえば、勝手に調べたっていうのはどういうことだ。問いただそうとした時、予鈴がなった。 「行かなきゃ」  そう言うと涼は立ち上がり、さっさと教室に向かってしまった。  青は、混乱の真っただ中で、涼の後を追った。
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