ピンク映画館に行った話

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年度の切り替わりでバタバタな仕事に追われ 理解も知識も配慮もない上長に振り回され 毎日が12時間以上の在社時間 家に帰れば日付が変わり、洗い物や洗濯物が溜まり、子供の顔は寝顔しか思い出せない日々が続き 心の熱量や気力がすっかり失われた動く屍のアラフォー女は、 4/1 23時 自分か文化かのどちらかが生きているうちに1度は行っておきたいと常々思っていたピンク映画館に今夜行こうと決めた。 いわゆる8点ver(※あえて誤変換です)なのは承知していたので、 行く前に映画館に電話をして 「男性のお客様が多いかと存じますが、女1人で伺っても失礼ありませんか?」と聞くと 「成人されていれば何も問題ないですよ〜いつでもお気軽にいらしてください」と言われた。 ぼやけた月明かりの下、深夜の高速道路を走る。 わたしはひたすら上長への恨みつらみを吐き出しながらハンドルを握っていた。 映画館の入り口には上半身が丸出しの女性のポスター(昭和風)が何枚か貼ってあり、 自分の子供の通学路がここだったら嫌だなと思った。たぶん親はみんなそうだろう。 間違いなく、そう遠くない未来に消える文化だ。 車を停め、窓口に向かって、 電話した者です…と声をかけると、よくいらっしゃいましたねと言われた。 初めてなので勝手がわからないから失礼があったらごめんなさいと伝えた。 入場料をトレーに置くと、窓口からシワシワの手が伸びてきてそれを受け取った。
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