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男性が目を丸くしながら
あらら…じゃあ何しにきたの…こんなところに女の子1人で……
と聞いてきたので、
仕事に疲れて心が限界なので1度は見ておきたかったものを見て精力を分けてもらおうと思って、と、くそ真面目に返した。
これがよくなかった。
どうも予想外の答えがおもしろかったのか、このあと激しい質問責めにあった。
まるで何かの導入前のインタビューのようだと思った。
最初は煩わしく感じていたが、そういえば家族や会社の人以外と話をするのが久しぶりだなとふと思った。
わたしは今、自分のこと以外の一切の責任を負わなくていい時間の中にいるんだと思うとなんだか泣きそうになった。
男性の質問に淡々と返事をしながら、真剣に映画を観た。
これは余談ですが、男性は別れ際に、
「ここでこんなに真剣に映画を観たの、人生で初めてだったよ」と言ってきた。
そりゃあよかったね(´∀`)と思った。
映画はひたすら昭和テイストで、ストーリーをざっくり説明すると、
若い頃に付き合っていた
↓
望まぬ妊娠をしてしまい、男側から「産むなら別れる」と言われたので別れて1人で育てていくことに
↓
女側にはこの人生の道中でさまざまな出会い(8点)がある
↓
子がJKになった頃に実の父親と偶然再会
↓
あの時の子!実の娘!
↓
元サヤ
という流れだったのだけど、
まずこの身勝手な男がマジでクソ。大っ嫌い。
産むなら別れるとか、
は〜?!なにさま〜?!?!?である。
赤ちゃんが犠牲になる悲しい事件が後を絶たない世の中ですが、女の人1人で子供ができることなんてないのに女の人だけ捕まるのは絶対におかしい。間違いなくこういう男が悪い。
この胸糞ストーリーが成り立っていたのが昭和なことを
女は男の3歩後ろを下がって…の昭和に生きていたわたしには理解できてしまったのだけど、
そう考えると、令和は随分やさしい時代になったなと思った。賛否はさておき。
道中で何度か濡れ場(もちろん疑似)が入るが、
まじまじと見たのは最初だけで、2回も3回も見ているとあまりにもワンパターンで飽きる。
その角度はさすがに入ってないだろ、とか、
人の身体って柔らかそうだな、とか(わたしは肉の鎧に包まれているのに全身固い)
女優さんよりも恰幅の良い男優さんのほうが巨乳なことが気になって仕方がなかった。
隣の男性はその間もずっと話しかけてきていて、
8点してる人たちがいたら見に行ってもいいんだよ、とか、休憩所でみんな集まってるから見に行く?とか、
いつもは女装の子がいてみんなその子に群がってるんだよ、とか、
いま俺達が始めたらみんな見にくるし、あちこちから手が伸びてきて触られちゃうよ、とか教えてくれた。
わたしは、もしどこかで誰かが始めたら見に行ってみようかどうしようかと考えながら黙々と映画を観ていた。
人がしているところ(しかも男性同士)を見たことはなかったなぁ、と思った。多分ちょっと見たかったのかもしれない。
でも誰も何もしていなかった。少し残念に思った。見たかったんだと思う。
映画はストーリーパートが7割、濡れ場が3割くらいで、1本40分程度で終わった。
モザイクはないけど女優さんは下はパンツまで、男優さんのナニが映る時はアダルトのホビーだったので、
女優さんの細い指がアダルトのホビーをコネコネしているのに男優さんがはしたない声をあげていることがすごくシュールで笑ってしまった。
映画の休憩中も男性とずっと話をしていた。
もちろんフェイクを入れたが、
男性は特に意見をするわけでもなく、遮るわけでもなく、ひたすら、うんうん、とわたしの話を聞いてくれていて、
会話の節々で、がんばりやさんなんだなぁ、とか、えらいなぁ、一生懸命なんだなぁ、とか言った。
てきとうな相槌でしかないはずのそれが、冷え切った心を溶かしていくのを感じた。
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