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それなので俺は彼のことを彼女に教えたくなった。
「この黒川さんは、若いのに運転が丁寧だから安心して乗ることができるんだよ」
すると彼女はうつむき加減に俺の肩に顔を近づけて、小さな声で言った。
「タクシー運転手とか、市井の一般人なんて興味ないんじゃないかって思ってた」
俺は「そんなことはないよ。人並みには覚えているよ」と返した。
すると彼女はうつむいたままさらに続けた。
「私、庶民の出だけどいいの?」
俺は彼女の顔を見た。端正に整った横顔は少し陰っているように見えた。以前も何回か同じ事を言われた。結婚を控えて不安になっているのだろう。マリッジブルーというやつか。
(続く)
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