(一)

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 俺は彼女の唇から少し自分の唇を離し、彼女を見てみた。彼女は微笑んで俺の目をまっすぐ見ていた。  しばらく真っ直ぐに見つめ合ったあと、彼女は目をつぶり、俺の唇に自身の唇を押しつけてきた。そして先よりも強く、お互い何度も吸い合った。  ハイヤーは新宿西口のターミナルまで来た。彼女を下ろし、俺は「電話するから」と別れの挨拶代わりに言った。  そして俺は車を会社に向かわせた。  淡いピンクのカーディガンに白いブラウス姿の彼女は。少し淋しそうな顔をしながら、胸元で小さく手をコチラに手を振っていた。俺も窓越しに軽く手を振った。  そのとき、彼女の唇がサヨナラと動いた気がした。 (続く)
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