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「では、早速なにかお肉料理を食べます?」
「え?今からですか?」
「なにか問題でも?」
「い、いぇ、こんなに早く信じて貰えたのははじめてなので、こんな奇妙な話」
「そこはそれ蛇の道は蛇、蛇の目はミシンです。ちなみにミシンというのはマシーンと言ったのを聞き間違えてミシンと呼ばれる様になったそうですよ」
「は、はぁ」
氷川も別段なんでも信じるという質ではなかったが、職業上半信半疑の話でも全て乗っかるのが体に染み付いていたのだった。
「では早速、マスターなにかお肉料理出してくれませんか?」
「肉料理?そんなもの出したことないよ」
「そこはほら、僕の顔に免じてね、お願いしますよ」
「はーぁ、仕方ない。ジビエ料理をやってるマスター仲間から貰った肉があるけど」
「あ、マスターなんの肉かは言わないで下さいよ」
「え?なんで?」
「まぁまぁ」
暫くして出された肉料理は見た目には全くなんの肉かわからなかったが、美味しそうなにおいが鼻孔をくすぐった。
「いいねぇ」
「いんですか?こんなに高そうな」
「大丈夫大丈夫、そのかわり食レポお願いだよ」
当然普通の食レポを聞きたい訳ではない。
「ん、これは、なんというか」
「ん?なんというか?」
「凄い!速い!」
「速い?」
「えぇ!めちゃくちゃな速さで野山を駆けめぐっています」
「おぉ」
「そして力が湧き上がってくる様な」
「おおぉ」
「こ、これはなんのお肉なんです?」
「マスター、なんの肉?」
「それは猪だよ」
「なるほど」
「すごいねぇ、なんか当たってるよ」
「はい、え?信じてたんじゃないんですか?」
「いやいや信じてるよ勿論、マスター他にはないの?」
「他に?他にねぇ、なんでも良いなら」
「なんでもこい!」
他人事だと思って調子の良い事を言う氷川。
「なんだか安い肉だから味は保証しかねるよ」
そう言ってマスターが出してくれたものは見た感じ鶏肉の様だった。
「なんだよ見た目で解るのは面白くないなぁ、でも一応食べてみてくれる?」
「え?えぇ、はい」
一口食べた後に山吹は変な顔をした。
「ん?そんなに不味かった?」
「え、いえ、不味くは……」
山吹の顔が段々と蒼白になっていった。
「おいおいマスターほんとに大丈夫な肉なんだよね?」
「え?ええ、賞味期限切れとかではないはずですよ私も少しだけ食べましたし、そんなに不味くもなかった気が」
氷川とマスターが会話している間にみるみる山吹の顔色が悪くなっていっている。
「く、くらい」
「え?」
「くらい、せまい、くらい、せまい」
「え、え?」
「くらいせまいくらいせまいくらいせまいくらいせまいあーーーーー!」
山吹は突然立ち上がったかと思うと近くの壁に頭を打ち付けた。
「お、おい!」
氷川は驚いて山吹を羽交い締めにした。
「あ、あ、あ、あーーーー!」
その間も山吹は叫んでいる。
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