霊能者

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暫くして落ち着いた山吹に話を聞いてみた。 「真っ暗で狭い場所に閉じ込められていた」 「なんだよそれ」 「最後は気が狂いそうになったけど、なんかの薬で大人しくさせられた様な」 「そんな動物いるか?」 「いや、確か聞いたことがある」 マスターが暗い顔で話はじめた。 「とある国の鶏はお互いが見えると暴れるから真っ暗な小屋にギュウギュウに詰めて餌だけ与えられて運動もさせて貰えずに出荷されるとか」 「いやいや、流石に精神衛生上よくないだろ?例え鶏でも」 「もちろんそんな環境で成長ホルモンとか打って無理やり育てると病気になりやすいんだが抗生物質を打ったりして無理やり病気にならない様に育てるとか」 「こぇーな」 「そ、そんな、悲しい鶏が」 「おそらくC国の量産型の鶏だな」 「いやいや、そんな鶏肉流れてるきてるの?原産国名で見たことないけど」 「原産国を表記しなくても良い場合がけっこうあってね、屋台やコンビニの鶏肉とかは別にどこの国から来たのか誰も聞かないでしょ」 「たしかに」 「でも、人体に悪い成分が基準値を超えて出てきた場合振り落とされるはずなんだけどね」 「じゃあ科学的には大丈夫なのかな一応」 「駄目ですよ」 「え?山吹君なんて?」 「科学的に良くても駄目だと思うんです」 「と言うと?」 「本来動物を食べるという行為はその動物の持ってる精気だったり力強さをいただくと言う意味もあると聞いたことがあります」 「ほう、それはなんとなく聞いたことがあるような、アイヌの様な人々の教え?」 「はい、それで僕は思うんですよ僕の様に極端ではなくても人はそれぞれ食べた肉の持ってる何かを受け継ぐのかもしれないと」 「……なるほど、そうなると」 「そう、そうなるとさっき僕が感じた様な負の感情も知らず知らずに受け継がれてしまうんです」 「怖いね」 「ええ、怖いですよね」 「でも鶏肉食べて叫びだしたなんて話聞いたことないから、大丈夫なのじゃない?」 「そうかなぁ」 「あ」 「どうしたのマスター?」 「え、いえ、なんでも」 「なんだよ、ハッキリ言ってよ。気持ち悪いじゃない」 氷川はマスターになんとも言えない笑顔で詰め寄った。 「じゃあ言いますけど、ほんと、関係ないかも知れませんよ」 「わかってるよ」 「最近ほら聞くじゃないですか」 「何を?」 「日本は若い人の自殺者が多すぎるって」 三人は身じろぎもせずに変な沈黙が流れた。 了
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