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「やっと、見つけた」
今、アタシの前には、ずっと追い続けた男がいる。
竜殺しの英雄が。
とある王国で城仕えする天才魔術師のアタシと、まあまあ腕の立つ東方の忍者と、それなりに役に立つ癒し手と、斧の扱いにかけてはこの王国で右に出る者はいなかった、騎士団長の彼。
ここ数十年、王国の各地を襲っては、黒い炎で人を、家畜を、村まるごとを燃やし尽くした魔竜。それを追い詰め、四人で倒したのだ。
だけど。
英雄になったその晩、彼は城の祝賀会場を一人抜け出し、そのまま行方をくらませた。
『魔竜を倒したら、結婚しよう。盛大な式でなくて良いんだけど、君と私の立場を考えたら、周りが勝手に盛り上げてしまうかな』
照れ笑いすると幼く見える顔の印象と、アタシの瞳の色である紅玉を抱いた指輪。
そして、騎士団長なんて大層な肩書きに似合わない、おずおずとした控えめな口づけ。
その記憶を、アタシに残して。
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