すもももいぶん

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さっきは自分の死を覚悟したけど、それがお姉に入れ替わってしまった………嫌だ! 「だめーーーーーー!」 死ぬのは嫌だけどお姉が死ぬのも嫌だ! 脳裏に、ひとり取り残される自分の姿が鮮明に浮かんできた 冗談じゃない! そんなの耐えられるはずない 私は必死でお姉の腰にしがみついた 「行かないでお姉!ひとりにしないで!戻ってきてえぇ」 思いがけない静止を受けてか、お姉の身体からガクッと力が抜けた 「やだやだ放してすずな、動けないから!」 私を引き剥がそうとするお姉に全力で抵抗する 「イヤだ!死なないでお姉ちゃん!死んじゃイヤだぁ」 そんなことしてるうちに、ヒグマが動きを見せた 私たちに確実な死が迫る、覚悟を決める時間など与えてはもらえない しかし驚いたことに、彼はぐるりと回って私たちにその大きな背中を向けた そして自分が炊いた火と鍋を残して、洞窟の奥へとゆっくり歩きだした え…なんで? てかあれ?私たち、助かっ…た? 緊張の糸が切れた私たちは、その場にへなへなと座り込んでしまった ヤバ、腰が抜けるってこーゆー事なんだ。まさか本当に体験する時が来るなんて思わなかった お姉も、やっぱり怖かったんだ なのに私を守ろうとしてくれたのね…感謝 命の危険が去って、私たちはすっかり油断していた そう、油断しきって 背後から来る人影に気が付かなかった 「戻ったで、なんや賑やかやな」 突然背後から声がして、私たちは凍りついた なんて事!仲間がいたんだ お姉の反応は早かった、その言葉が終わるより早く立ち上がり対応した いや…立ち上がって対応したかったに違いない…けどできなかった 腰を抜かした私が全力でしがみついてたら、さすがのお姉も動けない… ああぁぁごめんお姉えええ…ダメな妹でごべんなざいいいぃ いや負けるもんか、せめて今度はにらみつけて相手を威嚇してやる こっちに近付いて来た、がんばれ私!がんばるぞ私! 「可愛らしいお客さんやねぇ、君の知り合いなん?」 ヒグマに話しかけるその言葉はなんだか妙に気の抜けた感じで…てかなんで関西弁? よし、きっとヒグマほど怖くない! まけるもんか、勇気をふりしぼって顔を上げ、新たな脅威に鋭い視線を向けたその時 目に映ったものを、どう表現したら良いのか…私にはわからなかった 火の灯りに照らされたその姿は 流れる長い金髪、切れ長で少し目尻の下がった涼しげな眼差し、茶色の瞳、ほっそりした小顔になんだかイカした口にすらりとした長身で、えっと…えっと…それからあと、ようえんなふんいきで… ぶっちゃけ、えっと……か、神? つまりイケメン!しかもそんじょそこらのイケメンじゃないスッゴいイ・ケ・メ・ン! え?ええ?TVでも見たこと無いほどのイケメンがそこに立っていた 私の目力でにらみ倒すつもりが、思わず見とれてしまった いやコレもう仕方ないよね?だってスッゴい神イケメンなんだからしょうがないやんね、私がんばったよね? イケメンはさらに遠慮なく近付いて来て、私たちを覗き込んで微笑んだ お~い今度は金縛りだよ、神イケメンからなんか可愛いって言われちゃったよ関西弁で。全然動けないよ、私がジャマでお姉も動けないよ も~、どーしろってのさ~ ヒグマが立ち止まり、振り返ってイケメンに応える 「知らない」 「そか、で?火ィほっといてどこ行くん?」 「小さい娘が私に怯えるのでな、少し離れる」 え……?何…?今なんて? ひょっとして…このヒグマいい奴なん? しかもちょっとイケボじゃない? イケメンはヒグマの側に進み、火の近くで腰を下ろす くっついてるお姉から緊張が抜けてくのを感じて、私もだんだん動けるようになってきた 私たちはゆっくり立ち上がり、焚き火を挟んでイケボヒグマ&神イケメンと向かい合う形になった 美男と野獣…めっちゃ絵になるやん 何か話さなきゃ、聞きたいことはたくさん有る。 頭を整理するためにもこの人(?)たちからの情報は大事だ なんとか口を開きかけた時、また後ろから声をかけられた 「誰だよテメェら」
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