すもももいぶん

6/8
前へ
/8ページ
次へ
目玉が落っこちるほど目を見開いて、眉間に力いっぱいシワを寄せ、目尻を両手で引っ張った変顔で、響さんは話し始めた。 目が、ギロリと音が聞こえるほどの鋭い眼光を放つ 「私のことは壁だと思って、道具として使い捨ててくれればいい」 しかばねくまさんだ!似てる。 てか意表を突かれた、そっちか。 顔を元に戻した響さんが、今度は泣きそうな表情で続ける。 「こんなこと言うんだけどさ、すずちゃんど~思う?」 イヤ…無いわ~。なんとなく言いたいことはわかるし、響さんのこと大事にしてるけどきっと不器用で…とか色々想像しちゃうけど…女の子に対してそれは無いわ~。 「それは…ぴえんだね~」 思わず口に出た。 響さんの泣きそうな顔が、きょとんとした表情に変わった。 あそっか、こっちではぴえん使わないのか。 じゃ今度は両手を目に近付けて 「ぴえん」 興味津々で覗き込んでくる響さん、私の真似をして、両手を目に近付けて 「ぴえん?」 そうそう、私は頷いて答える。 「ぴえん♪」 今度は二人で一緒に 「「 ぴえ~ん♪」」 めっちゃ楽しい!響さん最高。 ずっとお話ししていられる、てかしてたい。 そんな楽しい時間を、不機嫌な声が遮ってきた 「楽しそうだなお前ら…緊張感無しかよ?」 悪態人型わんこが眉間にシワを寄せてこっちに来た。 ちょうどいい、私は空になったお椀を差し出した。 「ん、おかわり」 「あ?」 「おかわり、って言ってんの」 剣の顔が怒りでみるみる赤くなっていくのがわかる、分かりやすいやつめ。 「てめぇ!ケンカ売ってんのか?」 怒鳴られても怖くない、こっちにはこのショタわんこを顎で使える正当な理由がある。 「あんたさっき私のパンツ見たわよね」 「はぁ?なに言ってやがる」 「乙女のスカートの中覗いて、ただで済むと思ってんの?これから響さんだけじゃなくて私にも仕えなさい!ほら、おかわり」 空のお椀を顔の前に差し出すと、剣は言葉を無くしたのか口をぱくぱくさせた。 なに変な顔してんだか。多少イケメンショタだからって、やって良いことと悪いことは有る。 ここはハッキリさせとかないと。 剣が俯いて肩を震わせてる。自分の罪を理解したか?でもそー簡単には許さないよ。 てかおかわり早よ。 剣は突然顔を上げると、一段と大きな声で吠えだした。 「バカヤロウこのクソガキ!てめぇみたいなガキのオムツ見て何が楽しいってんだ?!」 クソガ…?オムツ…?!なにコイツ、何なのコイツ信じらんない! 「こんなかわいい女の子になんて事言うかな、このちびわんこ!信じらんない!」 「うるせぇクソガキ!」 「だまれエロわんこ!」 突然、響さんと刺繍くんが吹き出した。 響さんはお腹を抱えて大声で笑いだした、刺繍くんは声も出せずに地面をバンバン叩いてる。 屍くまさんは顔を背けて手で口を抑えて苦しそう…必死に笑いをこらえてる? なんだなんだ?何がツボった? 響さんがなんとか言葉を絞り出した。 「え…エロわんこ…エロわんこて…」 刺繍くんは壁をドンドン叩いて大ウケしてる。 「あ…新しい、エロわんこ」 そんなに?そんなに面白かったん? もっかい剣を指差して繰り返してみた。 「エロわんこ」 とたんに響さんと刺繍くんが地面にひっくり返って転げ回った。二人とも息もできないくらい大爆笑。 屍くまさんは完全に背中を向けて、漏れる声を全力で抑えようとしてて、なんだかもう倒れそう。 ひとりのこされたエロわんこ。 何?ストイックキャラだったん?知らんけど。 んじゃ今日からは執事風にキャラ変して心入れ替えるといいわ。 それにしてもこのわんこ君… う~ん…ビジュアル的にはかなりいい線いってるだけに、このデリカシーの無さは惜しいわ~。 きっと彼女とか、いないんだろうなぁ。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加