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私は化物です
「さとみ、なんか良いことあった?」
「え~、わかる?」
「バレバレだって。いいから吐きな」
「今はちょっと。昼休みにね」
「焦らすなし! 気になるじゃん」
【橋本君と付き合うことになりました☆】
バスケ部のエースの橋本君。高身長で頭も良くて優しいときたら、誰もがその彼女の座を夢見ることだろう。私はさとみと楽しそうに話すクラスメイトに目を向けた。
【橋本君に告ろうと思う!】
昼休みが終わった時、二人の友情は保たれているのだろうか。私は少し先の未来を憂いた。私の口から漏れ出た小さな溜息を、渡辺二葉が掬い取る。
「どうしたの」
「いや、嵐になりそうだなって」
「どういうこと?」
「適当言っただけ~」
「あっそ」
短い返事の後、二葉は読んでいた文庫本に再び視線を戻した。窓から差し込む爽やかな朝日が、二葉の艶やかな黒髪を撫でた。
ガラガラっと大きな音を立てて、教室の扉が開かれる。校則違反ギリギリの栗色の髪を、これでもかとカールさせたツインテール。耳元のシルバーのピアスが煌めく。
「みんなおっはよ~!」
「おは~。朝から元気だね~」
渡辺三咲はクラス中に元気な挨拶を振りまき、まっすぐに私たち二人の元へやってくる。そうして私と二葉の後ろの席、クラスで言うところの一番左下の席まで着くと、キャラクターもののキーホルダーでジャラジャラと煩い鞄を置いた。
「二人とも元気ないじゃ〜ん! テンション上げてこ?」
「いつも言ってるけど、三咲が元気すぎるんだよ」
「もう、二葉は今日もクールだね。そんな貴方がス・キ♡」
ちゅっと投げキッスのジェスチャーをする三咲を二葉は華麗にスルーした。ちょうどそのタイミングで、担任が入ってきた。
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