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「はい、おはよう。朝のホームルームでは特に連絡事項はありません。みなさん、五限の課題は忘れていませんね? 昼休み中に頑張れば終わるはずなので、今からでも諦めずにちゃんと提出するように。以上!」
【突然ですが、今日は小テストを行います】
「げ……」
担任の顔を見るや否や苦い顔をした私、渡辺一花を二葉と三咲がのぞき込む。
「なんとなく、五限に小テストがある気がする」
「なにその意味不明な予感!!」
「でも、一花の予感は当たるから」
「本当にただの勘だよ、勘。なんか先生、小テストしちゃうぞって顔してた」
「どんな顔だよ~。まあ、一花様の予言とあれば、今日もいっちょあやかりますか!」
勢いよく立ち上がった三咲は、私たちの前に立ちはだかり、右の手のひらを床に向け差し出してきた。私は二葉をチラッと見やり、三咲の手に己の右手を重ねる。二葉も面倒くさそうに右手を重ねた。
「よ~~し、そんじゃあ今日も元気よくやっていこう! 我ら桜野高校三姉妹! せ~~~の!」
「いち」
「……にの」
「さ~~~~ん!! ってもう、二葉もちゃんとやってよ~!」
「こら~、廊下まで響いてるぞ三姉妹!」
「ごめんなさ~い!」
「今日も姉二人がとばっちり受けてらあ」
クラスの男子が愉快そうに憐れんだ。二葉は文庫本を仕舞い、一限の準備を始める。私は窓の外に目を向けた。
もうじきマフラーが必要かという今日この頃、隣のクラスは一限目から体育の刑を受けている。半袖半ズボンで鬼ごっこに勤しむ男子、校庭の隅っこで身を寄せ合う女子達。その光景から少し視線を手前に戻すと、窓にうっすらと反射する己を認めることができた。
【私は化物です】
私、渡辺一花には、人には言えない能力がある。
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