私は化物です

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 帰り道に通り抜ける中央公園。ベンチに座って通話をしているサラリーマンの表情は暗い。話しながら、左手の薬指の指輪を見つめている。 「うん、じゃあそろそろ仕事に戻らなきゃ。晩御飯は外で済ますから、先に寝てていいよ。じゃあね、愛してるよ」 【ごめん、海外転勤が決まったんだ】  その隣のベンチでは、二十代半ば頃のカップルが手を繋いで寛いでいた。彼女はかけっこをする子ども達を微笑ましく見つめている。一方の彼氏は、繋いでいない方の手でスマホを弄っている。 「ねえ、今夜はうちでご飯にしない? 久しぶりにゆっくり話したりしてさ」 【私、デキちゃったみたいなの!】 「んあ? うん」 【他に好きな子出来たから、別れよう】 「じゃあスーパー寄って帰ろうか!」 「ああ」  彼女さん、強く生きて。私は公園を立ち去るカップルを静かに見送った。自販機の前でおしゃべりをしていた、他校の女子高生二人組が騒がしい。 「うっそ、ライブの最新情報流れてきてる! でもこれ公式も未発表の情報じゃんね?」 「解禁前に漏れたってこと?」 「ぽいわ。え~、どこから漏れたんだろう!」  私の人には言えない能力…… それは、解禁前の情報を知ることができる、というものだ。心を読むのとは少し違う。先々に公表する意思はあるが、現在は言わずにいる秘め事、私はそれを読み取ることができるのだ。  今日の小テストなんかはレアケースで、大抵は全く役に立たない。後に知りえる情報が、少し早く手に入るというだけなのだから。サプライズで驚かそうとしてくる相手は厄介だ。周りからはよく反応が薄いと言われるが、これでも精一杯驚いた演技をしているのだ。  本当に、こんな能力、ちっとも嬉しくない。  私は先程のサラリーマンよろしく表情を曇らせた。そうして公園を抜けようとしたその時–––– 【この町のどこかに、爆弾を仕掛けた】  
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